かわいい「奈良のシカ」。国同士がいがみ合っても、「奈良のシカ」に接すれば、みんな笑顔。偉大なる国際親善大使。キタローも「奈良のシカ」が大好きで、鹿サポーターズクラブの会員でもあります。
先日、奈良の鹿愛護会の方のレクチャーを受ける機会もありましたので、一度、「奈良のシカ」についてまとめておきたいと思います。
目次
シカは何頭いる?
推定個体数(ニホンジカ)
本州以南 約246万頭 (2022年) 環境省のレポート
奈良県 約 4.7万頭 (2012年) 環境省のレポート
奈良のシカ 1,325頭 (2024年) 奈良の鹿愛護会調査
「奈良のシカ」の頭数推移
コロナの発生とともに頭数は減りましたが、コロナ収束後着実に頭数が増えています。
ニホンジカの種類は?
7種類の亜種があると言われています。
エゾジカ(北海道)
ホンシュウジカ(本州) → 「奈良のシカ」
キュウシュウジカ(四国・九州)
ツシマジカ(対馬、長崎県)
マゲジカ(馬毛島、鹿児島県)、
ヤクシカ(屋久島、鹿児島県)
ケラマジカ(慶良間諸島、沖縄県)
「奈良のシカ」は、だれが飼っているの?
だれも飼っていません。野生の動物です。ただ、昔から奈良では大切にされてきたシカですから、奈良の鹿愛護会を中心に保護活動を行っています。
「奈良のシカ」は何を食べているの?エサはなに?
芝、葉っぱ、どんぐりなどの植物です。鹿せんべいはおやつと言われていますが、コロナ収束後の観光客増加に合わせて、「奈良のシカ」の頭数は増えているので、鹿せんべいは主食なのかもしれませんね。
「奈良のシカ」が食べない植物はあるの?
あります。ナンキンハゼ、ナギ、アセビ、イラクサなど。奈良公園では外来性のナンキンハゼが増えすぎて伐採したり、春日大社ではナギばかりが群生して樹林となり天然記念物に指定されたりしています。
シカの寿命は?
オス 約15歳 メス 約20歳。何もなければ、これぐらい生きますが、「奈良のシカ」の場合、平均寿命は4~5歳ということです。何と、悲しいことでしょう。体力がなく最初の冬を越えることができない小シカ、交通事故にあってしまうシカなど、野生ゆえの理由で、人間と共生しているがゆえの理由で、長生きできない鹿が多いのです。。
「奈良のシカ」は夜どこで寝るの?
奈良公園のどこかで数十頭単位のグループをつくって眠ります。早朝に奈良公園に行くと、数十頭のシカが固まって寝ているのを見ることができます。
シカの天敵は?
犬です。犬の先祖はオオカミですが、オオカミはシカの天敵でした。ただし、小さなペット犬だと、シカに蹴りを入れられて、ケガをしてしまう可能性もあります。犬は大小に係わらず、奈良公園周辺では散歩を避けたいものです。
子シカの食べ物は?
生まれて20日程度は母乳のみですが、その後は植物を食べ始めます。なお、3ヵ月から1年程度は母乳も飲みます。生まれたばかりの子シカに、鹿せんべいを食べさせようと頑張る人がいますが、子シカは食べないし、母シカを怒らせることにもなりかねないので、無理しないことが大切です。
「奈良のシカ」交通事故
下のグラフが示すように、年間100件強の交通事故が発生しています。奈良のシカの頭数は1,000頭強だから、毎年10頭に1頭が交通事故に会っている計算。エサ(鹿せんべい)を求めて、オスに追いかけられて、母シカを追いかけて、道路に飛び出すことがあるから、奈良公園周りの運転は気を付けたいところです。
奈良のシカは信号を守るという都市伝説がありますが、それはウソです。全然守らないし、信号機がないところを平気で渡ります。ゆっくりと道路を渡ってくれると、車も止まることができるのですが、驚いた拍子に道路に飛び出すことがありますから、怖いです。
奈良では、なぜシカが大切にされているの?
768年に春日大社が創建されましたが、主祭神の第一神である武甕槌命(タケミカヅチノミコト)は、春日大社創建の際に、鹿島神宮から白い神鹿に乗ってやってきたと伝えられており、1300年にわたり春日大社を含む奈良公園では鹿が手厚く保護されてきました。
明治以降の歴史
1873年 | 鹿園(木柵)が建設され、700頭以上の鹿を収容。11月、餌不足などで多くの鹿が死んで38頭まで減少したが、鹿を解放して、絶滅を免れた。 |
1891年 | 春日神鹿保護会(奈良の鹿愛護会の前身)が創設された。 |
1946年 | 戦中・戦後の混乱によって、鹿の密猟が進み、約80頭まで減少した。 |
1947年 | 奈良の鹿愛護会が発足した。 |
1957年 | 「奈良のシカ」は人と生活が溶け込んで共存してきた歴史が評価され、地域を指定しない国の天然記念物として指定された。 |
2009年 | 鹿サポーターズクラブが創設された。 |
明治維新以降だけでも、二回絶滅の危機に瀕していたことがありました。シカがいない奈良公園は楽しくないですよね。以上、まとめていて、適切な保護の重要性を改めて認識したキタローでした。
宮島の鹿
先月妻のお供で、岡山、広島、山口へと行くことになり、宮島で鹿に会うことを最大の楽しみにしていました。
事前に調べてみると、エサやりは禁止で、鹿せんべいも廃止したとのこと。鹿せんべいをあげることを楽しみにしていたので、残念な気持ちになりました。地域の事情で決めたことなので、そのルールは守らないといけません。鹿は眺めるだけ、少し触れるだけにしようと決め、島に上陸。
宮島の市街地にはほとんど鹿がいないから、フンはほとんど落ちておらず、奈良のように臭くないし、フンを踏むおそれもありません。ちらほら鹿がいましたが、概して痩せていて、小さい。
奈良のシカが国の天然記念物に指定されたのは、野生動物と人間の類まれな共生状態が理由。宮島でも野生動物と人間の共生を目指していますが、その方法は鹿を山に戻し、市街地に来させないことのようです。
奈良では外国人を中心に来訪者が増え、鹿せんべいの与え方がまずくてシカを怒らせたり、発情期の角シカに自ら近寄ったりして、角で刺されるなどのトラブルが増えていますので、啓蒙は大切。
でも、奈良に来てシカを見て、鹿せんべいをあげている来訪者の様子はどうでしょう。人種に関係なく、大人も子供も笑顔でいっぱい。こういう光景はずーっと続けていきたいものだと改めて思ったキタローでした。鹿は偉大なる親善大使。