興福寺①(五重塔と東金堂)

奈良が大好き、キタローです。

猿沢の池から興福寺側を眺めたことありますか。左端に南円堂、右端に五重塔が、猿沢の池のみなもに写り込む風景は最高です。池に隣接したスターバックスで購入したラテを片手に、しばらく風に当たると心が和みます。

さて、ここでは並列する五重塔と東金堂をご案内いたします。

五重塔(国宝)

興福寺の五重塔は、奈良時代(730)に光明皇后の発願で建立されました。その後5回の焼失、現在の塔は室町時代(1426)に再建された6代目です。

高さは50.9m、現存する日本の古塔のなかでは2番目に高い塔で、古都奈良のランドマークです(1番は京都の五重塔で、55m)。この塔は、初層は3間8.7m、各層の屋根の大きさがあまり変わらないことから、近づくと迫力、圧迫感を感じますね。

初層には四天柱の各方向に以下の三尊像(いずれも室町時代作)が祀られています。
 東:薬師如来(脇侍:日光菩薩、月光菩薩)
 南:釈迦如来(脇侍:文殊菩薩、普賢菩薩)
 西:阿弥陀如来(脇侍:観音菩薩、勢至菩薩)
 北:弥勒如来(脇侍:法苑林菩薩、大妙相菩薩)

五重塔の目的は何でしょう?

「答え」五重塔は仏塔で、釈迦の遺体や遺骨を安置するために建てられた仏教建築のことで、サンスクリット語では「ストゥーパ」と呼ばれています。法要の時に縦長の木を見たことありませんか。あれは「卒塔婆(そとうば、そとば)」といい、故人を供養するためのものですね。

五重塔の各層はつながっている?

「答え」各層は独立していて、つながっておらず、下部から積み重ねた構造になってるそうです。トリスミ集成材株式会社さまのとりすみコラム「匠の技を読み解く ~法隆寺五重塔はなぜ地震で倒れないのか?~」によれば、法隆寺の五重塔も同様の構造で、通し柱で各層をつなげていないため、現在の建築基準では違反になるとのことです。

五重塔に心柱はあるの?

「答え」もちろんあり、建物の構造には関係なく貫通していて、相輪を支えています。上記コラムによれば、心柱は制振ダンパーの役割となって、塔自体が右に傾こうとすれば、心柱は左に動いて自立を保とうとする効果があり、地震の揺れを軽減する構造になっているとのこと。スカイツリーにも使われた心柱。だれが考えついたのでしょうね。

現在進められている改修工事について

明治時代に屋根の全面葺替工事を行ってから120年以上経ち、傷みが各処に見られることから、改修工事が行われています。五重塔は素屋根で覆われてしまい、その姿を見ることができません。今の予定では、工事の終了は2031年。ランドマークがきれいになって戻ってくるのを待ちましょう。
 工事の目的:屋根葺替及び部分修理
 調査工事:2020/9/1-2022/9/30
 修理工事:2022/6/1-2031/3/31
 総工費:57億円

東金堂(国宝)

奈良時代(726年)、聖武天皇が叔母の元正太上天皇の病気全快を願って建立しました。その後5度被災し、現在の建物は室町時代(1415)に再建された6代目です。

創建当初は床や須弥壇などに緑色のタイル(緑釉塼 りょくゆうせん 瑠璃塼 るりせん)が敷きつめられ、薬師如来の東方瑠璃光浄土(とうほうるりこうじょうど)の世界が表されていたと言われています。

東金堂は、間口25.6m、本瓦葺、前面を吹き放しとした寄棟造の和様の建物。

堂内は以下の仏像が祀られています。
 本尊:薬師如来坐像(重文 銅造、漆箔 室町時代)
 脇侍:日光・月光両菩薩像(重文 銅造・鍍金 白鳳時代)
 その他:
   文殊菩薩坐像(国宝 寄木造 鎌倉時代)
   維摩居士坐像(国宝 寄木造 鎌倉時代)
   四天王立像(国宝 一木造 平安時代)
   十二神将立像(国宝 寄木造 鎌倉時代)

薬師如来と十二神将の関係は?

「答え」新薬師寺も同じですが、十二神将は薬師如来の守護神です。

十二神将は、元々インドの夜叉(顔かたちがものすごく、性質が勇猛な、インドの鬼神。鬼。)でしたが、仏と仏法の真理に降伏し善神となって仏と信者の守護神となりました。薬師経によれば、十二神将は、薬師如来が菩薩の時に誓われた十二の大願に応じてあらわれる薬師如来の分身とされているそうです。

薬師寺HPを拝見しますと、十二の大願が説明されていましたので、記載しておきます。
 ①瑠璃の輝きは世界を照らし、全ての人々を悟りに導きます
 ②瑠璃の輝きは雄々しく巍々蕩々としていて、迷いの闇を破り浄瑠璃浄土に導きます
 ③悟りを得るために必要なあらゆる財物を施します
 ④迷う衆生を佛道へ導く方法を教えます
 ⑤戒律を破ってしまった者を反省させその罪を清めさせます
 ⑥病気や身体的苦痛を取り除きます
 ⑦病気や苦しみを取り除き、身心安楽にして無上菩提を証します
 ⑧成佛するために男女の区別なく無上菩提に至らせます
 ⑨正しい菩薩道に引き入れ、苦痛や煩悩を浄化できるようにします
 ⑩災禍や暴力などに苦しむ衆生が解き放たれるべく援けます
 ⑪著しい餓えと渇きに晒された衆生の苦しみを取り除きます
 ⑫困窮して寒さや虫刺されに悩まされる衆生に衣類を施します

十二神将のうち、草履をはいているのはだれでしょう?

「答え」伐折羅大将(バサラ)です。伐折羅大将以外は沓を履いています。また、髻(もとどり)に干支の動物が配置されていますので、確認してみましょう。

東金堂の拝観

五重塔の工事の関係上、東金堂の拝観は一時停止されており、現状入堂できません(2024/11現在)。来年4月ごろから再開できるとの情報もありますので、要チェックですね。